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日本生殖心理学会 理事長挨拶

ご挨拶

日本生殖心理学会 理事長 森本 義晴この度、久保 春海 初代理事長の後をついで理事長の重役を仰せつかりました。久保前理事長は、生殖領域におけるカウンセリングという新分野を切り開かれ、本学会をここまで育て上げられました。そもそも生殖医学の分野は、卵子や精子といった細胞を扱う生物学の一部で、科学を中心に発達してきた関係上、必ずしも当初は心理カウンセリングが、容易に受け入れられたわけではありません。それが今では、多くの人々に認知され、毎年さまざまな職種の300名以上の方が本学会学術集会に参加されます。さらに、これまでに立ち上げられた認定学習制度により、多くの生殖心理カウンセラーが誕生し日本中の不妊医療施設で活躍をしております。さらに、心理士のみに留まらず、その後に設立された不妊相談士制度の下では看護師をはじめとする心理士以外のスタッフがカウンセリング技術をベースにした方法を学習し認定され心理カウンセラーを現場で助けています。これらの認定学習制度の成功に関しましては副理事長で臨床心理士の平山史朗先生のご尽力が大きかったことを付け加えさせて頂きます。


さて、現在私たちが利用している医学は自然科学の一分野です。産業革命に端を発した自然科学はニュートンやデカルトが唱えた「二元論」を基礎としており、発展して参りました。「二元論」とは、人間の体は小さな部品からなっている機械であり、病気=故障はその部品を直すことによって直るというもので、心と身体は全く別のものという考え方です。一方、「一元論」とは精神と肉体は切っても切れない関係で一体で活動するものであるという考え方です。私たち医師は、自然科学を学んできた関係上、「二元論」をベースに患者様を捕らえがちですが、これでは不妊症の真の意味での治癒の達成は不可能です。人の身体は、神経系、内分泌系、免疫系などの系統的な支配を受けておりますが、どの系も脳つまり精神の状態に大きく左右されます。従って、肉体だけでなく精神への配慮なくしては不妊治療は完遂できないのです。


不妊症は大変ストレスの多い疾患であり、不妊治療には多くのストレスを伴います。まずは環境的ストレスです。結婚すると赤ちゃんができて当たり前という社会の通年が不妊患者様を悩ませます。多額の費用を必要とする不妊治療では大きな経済的ストレスを生み出します。また、最先端科学技術を応用する最近の不妊治療では、治療ストレスも相当なものです。私は、これらのストレスが多くの活性酸素の発生源となり、配偶子の質の低下を招いているのではないかと考えています。さらに、ストレスは徐々に患者様の精神をむしばみ、やがては不可逆的な精神病理的状態を来すこともあります。


女性は妊娠していなければ必ず月経が起こります。そして、月経を迎えるということは不妊症患者にとっては妊娠の失敗体験ということになります。それが不妊治療の長きにわたって繰り返されるのです。その失敗の度に、心の中には不安感や、失望感そして焦燥感がチェーンのようになってとぐろを巻きます。こんな状態で平気で居られる方がおかしいというものです。そこで、長い治療期間を経て来院される患者様については、不妊治療に先立って、あるいは並行して精神的ケアを進める必要があります。また、そういったケアを一緒にすることによって先端科学技術の応用などの医学的治療の効果がより一層高くなります。


このような意味から私は、不妊症を精神疾患の一種と捕らえています。即ち、この病気は、精神的アプローチなしでは治癒しないのです。そこで、本学会の生殖医療に占める役割には大きいものがあります。これからの新しい生殖医療は精神的アプローチを主体として発展すると思われます。今後そういう使命感を持って本学会の運営をしてゆきたいと存じます。


さらに、本学会のように生殖医療に特化した心理カウンセリングの学会は世界にも希です。そこで、わが国が先頭に立って、精神治療の重要性を説き、また諸外国でのこの分野での発展を助けることも私達のするべき仕事であると考えております。そして、きっと本学会はわが国のみならず世界中の不妊患者様を救済することになるでしょう。


学会は会員の皆様の強い意思によって発展します。会員の皆様の本学会への積極的な関与と活発な活動をお願い申し上げます。


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